みとしと


さあ
30-DELUX「シェイクス」

大阪公演も無事終了との報告を受けました。
はー
お疲れ様でした。
ご来場頂いたお客様、本当にありがとうございました。

思えば9月4日昼
顔合わせで初めて目を通した第3稿と呼ばれる台本。

お笑いの脚色と言う名目だったのに、
ほとんど全部手直しをして、
静馬さん、ごめんー!と思いながら
「静馬さん怒らないかなー、やばいかなー」
とか思いつつ、
設定も見直させて頂いて、



メイを恋人にしたり兄妹にしたり、
死んでいることにしたり、
シェイクスって名前にしたんだから、
シーンは同時進行で被せた方がかっちょいいよなーとか思ったり、
シェイクスピアの、なんか有名な台詞を使いながらも、
熱いメッセージねえかなーとか思ったり、
泣けるトコないかなーとか思ったり、
なんかお笑いで、大ネタ考えないとなーなんて思ったり、
キャラ全部アテガキにして、濃いのを作ってみようとか、
役名も全部意味をつけようとか、


思い出はたくさんです。


さて、千秋楽も終わったことですし
なんか、台本の裏話でも書きましょうか。




まず役名を列挙します。

江口久之(えぐちひさゆき・30)イベント会社の社員。@佐野瑞樹
匠 士也(たくみまさや・30)殺陣師。江口の昔の仲間。@清水順二
蓮窪メイ(はすくぼめい・27)パック役。江口の妹。@伊藤裕子
宗像大吾(むなかただいご・45)舞台演出家。@タイソン大屋
塚田マチコ(つかだまちこ・31)ベテラン女優。ジュリエット役。@小野妃香里
倉木ユタカ(くらきゆたか・25)倉木商事の御曹司。マクベス役。@柄谷吾史
小手形イチロウ(こてがたいちろう・23)ハムレット役。@林修司
目黒真直(めぐろますみ・27)リチャード三世役。@森大
台場真仁(だいばまさひと・25)抜擢新人俳優。ロミオ役。@郷本直也
倉木英来(くらきひでき・50)倉木電機社長。オーナー。@辰巳智秋
上西誠也(じょうにしせいや・40)江口の上司。@大場達也
藤尾テル(ふじおてる・24) 匠の部下。殺陣まわり。@下川真矢
市井彩(いちいあや・22) 出演者。殺陣まわり。@押田美和
勝瀬良成(かつせよしなり・21) 出演者。殺陣まわり。@飯田卓也



江口久之

原案では「関口まこと」という役名。
静馬さんに、「関口まことって、元・CCBのメンバーの名前じゃないですか!(笑)」と言ったところ、知らなかったみたいで。7月頃の打合せの時点で、役名に関しては俺があとでつけますねーという話になっていた。

このネーミングは、
うっすら目を細めてみると「シェイクス」に見える
「口」の部分を「イ」に近い文字にしようと思ったんですけど、
「江イ」「江伊」「江仁」?
いいのが無いってことで、画数の少ない「江口」に決めました。

佐野瑞樹君は、30-DELUXの「BIRDS」を見て清水さんに出たいと言ったようで、作/演出家・浅沼晋太郎さんのポップな感じの作品を気に入ってた模様。俺はそのことを知らなくて、主役だから「切なく格好良く」なんて江口久之を書いた。んだけど、本人的にはもっとお笑い部分をやりたかったらしく、笑いのシーンがあるたびに羨ましそうにしてました。真面目なシーンが多すぎたようで(笑)。知ってれば、もっと遊んだなー。

キャラを書くときのテーマは、
演劇の製作会社、ネルケプランニングの松田誠(LIVE BEER・ちびっこギャングシアター・怪物ランドなどに出ていた役者)さん。
20代前半の頃から知り合いなんだけど、
松田さんはものすごく役者としても素晴らしく、ツッコミも上手いし超格好いいと思っていたのに、カムカムミニキーナの制作に突如なって、芝居をやめちゃった。バリバリに動ける才能のある制作。裏に深いモノを背負っていそうな感じがとてもいいので、江口は松田さんと言うことで書いた。


匠士也

シェイクスピアといえば、「グローブ座」
Globeの「G」と、「匠」が似ていたのでつけた。
士也は、グローブ(地球)ってことで、「地球の」「地」の部分を分割。
殺陣師という役だったので、「匠(たくみ)」も「士(さむらい)」もぴったりくるなあと思って、我ながらとても気に入っている。

書いているときのイメージは、
エヴァンゲリオンの加治君。明るくて人当たり良さそうなキャラなんだけど、深いモノを背負っている感じ。メイを死なせてしまった事実と向き合って生きているけど、重く生きていたら、死んだメイに申し訳が立たない。そういうつもりで書いた。

清水順二さん
は、ホントにもう今回はスッポンのように食いついてきましたね。
事前に演技基礎のWSを8回ほど行って、清水さんはものすごく興味を示し、
演技力の向上にものすごいやる気を見せていた。
稽古の演出はもちろん毛利さんがばっちし行ってるんですけど、
毛利さんのお墨付きをいただいた上で、
ちょっとした演技指導などは俺が、稽古場の横とか外とかでちょいちょいとアドバイスさせて貰っていた。

清水さんと森君。この二人は
俺を引き留めては
「ちょっとIKKANさん見て下さい!」
と、目の前で勝手に演技を始めては俺に意見を聞きに来る。
このパワー。
すごいです。




蓮窪メイ

江口と兄妹という設定は後付なので、
名前だけ先に決めていた。
伊藤裕子さんと初めてあったときの第一印象。
「ハスキーボイス」の「めんこい人(俺の方言)」だなーと思ったのでつけた。
兄妹なのに名字が違うので、
蓮窪という名前は芸名ということにした。
でも、芝居上でそんなこと説明するのは野暮なのでしていない。

俺は芸能人疎くて、
佐野瑞樹君も、伊藤裕子さんも名前も知らなかった。
今回出演する人たちも誰がどんな人なのか全然知らなくて、
(清水さんタイソンさんは共演したことがあるので知っているけど、他の人は名前も顔も声も知らない)
でも、俺は台本書くときに必ずアテガキ要素を入れたい人なので、
清水さんに頼んで、役者さん全員に一度あわせてもらって、面接させて貰っていた。

で、伊藤裕子さんには
暗い芝居の役と、バカコントを試しに読んで貰った。
なるほど、どっちもキャラとして膨らませる事が出来るかもなーと思って
メイという落ち着いたキャラと、パックという明るいキャラ
正反対のモノを書いた。

心の中を丁寧に作ってくれるので、書いている方としては嬉しい。


宗像大吾

この役名は
タイソン大屋
さんが、自身のブログで「胸のことばかり考えている」
なんてのがあって、
「胸とか肩とかセクシーラインが大好きな子」
という意味で
宗像大吾にした。

役名にその人のイメージを被せておくと、
書いているときに、
あれ?この役なんだっけ?と思わずに済むからいいのですわ。

原案だと、この演出家の役がメインで
浮気話騒動が主だったので、
江口と匠が印象薄かった。
安原義人(テアトルエコーのベテラン)さんや、加藤健一さん(見たこと無いけど、やりそう)がやりそうな役で、これこそが主役だった!
だから、最初俺としては静馬さんの第1稿の原案を見たときに、この設定なら清水さんがやったほうがいいですよと言った。

でもプロデューサーや制作側から、
キャスティングとしては、この方向性で行きたい。
と言われ、
タイソンさんみたいな野獣系の人間で
浮気とかでうまいことやりくりするような頭脳派、どうかなー
と思ってた。

ので、
役のイメージを変えて

蜷川幸雄さん
流山児祥さん
唐十郎さん
このあたりのいかつそうな人にしちゃおうって決めて書いた。
上記の三人とも会ったこともないし、しゃべり方も知らないけど、
「世界のムナカタ」はもちろん「世界のニナガワ」です。
シェイクスピアばっか演出してるし、その辺はパロディです。
蜷川さんの演出したモノは、実は一度も見たことがないので、パロディって言っても適当なんですが(笑)。



塚田マチコ

小野妃香里さん
その芸名込みで、絶対宝塚出身だと思っていた。
違ったようで。
「宝塚と間違えた」
という意味の役名です(笑)

この役はとても難しくて
原案を読んだときに

「何故マチコは、宗像とデキているのか?」
「不倫でもないのに、宗像は何故隠したがるのか?」


当初のシェイクスの設定では
宗像はマチコと付き合っていて
メイと浮気をする。
そう言う話だった。
その浮気をどう隠すか、
それがストーリーの骨子の話だった。

浮気話をメインにしていたら
江口も匠も全然立たないし、
どうしようかって事で思い付いたのが
ただの新人女優という設定だったメイを、江口の妹という事にして、
その上、匠とは昔恋人同士だったということにしてしまった。
んで、メイを殺した。
これで、江口と匠が少しは主役になれる。


うわー
これをやったら
全面的に設定から何から書き換えだぞー・・・!!
なんて思いながらも
つい出してしまったアイデアに、
演出の毛利さんは
「それ!いいですね!」
と笑顔で答えた。



(このアイデアを出したせいで、俺が台本を全部直すことに成っちゃったと言っても過言ではない。これを言わなければ、もうちょっと楽な9月になったと思う。)



さあ
そうなると
宗像とマチコの存在がどうなるか。
浮気話がもうどうでもよくなってきちゃう。


市井彩と浮気したことにして
で、どうしよう。

宗像がひどい目にあう話で終わらせるか?
いやー・・・
30−DELUXってのは、清水さんがいつも言っている
スカッと終われるってのが大切なんだよなー。
きっと。



で、
宗像を既婚者ということにして
バレたらまずい!ってことにして
でも、浮気していたのに、あとでハッピーエンドは無いよなーとか思って。

で、思い付いたのが
マチコが処女だったって事。

肉体関係が無い。
同じホテルには居たけど
キスもしてない。
じゃあ、その説得力のある材料はどうしようか?
若い女性と二人きりでホテル。
相手は野獣系のタイソンさんが演じる宗像。

あ、酒飲んで記憶なくせばいいや。
それなら可愛いもんだ。

だから、「優しくされる」イコール「優しい言葉をかけられ、頭を撫で撫でする」
くらいにしよう。

野獣系の演出家が、
酒を飲みすぎると、柔らかい印象になって
「私にだけは優しい言葉をかけてくれる」
この特別扱いに
女子が惚れてみよう。


そういう理屈にした。


「不良が雨の日に捨てられた子犬を拾っている論」

この理屈に行き着くまでがもう大変で、
一番時間がかかった(笑)。


あー
長いなこの日記。
分けよう。



分けちゃいます。